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臨床研究

臨床研究

臨床研究は「広島大学医の倫理に関する規則」のもと、「臨床研究倫理審査委員会」「疫学研究倫理審査委員会」「ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会」などの承認を得たのち行われます。
現在行っている研究課題一覧を下記のとおり情報公開します。

特に、過去の臨床経験やデータを用いた「後ろ向き研究」では、当科で診療・治療を受けられた方の臨床データを使用させていただきます。個人が特定されない方法でデータは処理され、個人情報の保護は十分に注意をもって行います。これらの研究への参加を希望されない場合は、お申し出ください。参加を拒否することで皆様に診療・治療の面で不利益が生じることはありません。

皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

悪性高熱症に関する臨床研究

悪性高熱症の紹介
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悪性高熱症の確定診断するためには筋生検をして骨格筋診断を行わなければなりませんが、この検査を実施できる施設は限られています。広島大学はその数少ない施設の一つで、全国から送られてきた標本を用いて検査を行っています。筋生検は侵襲が高い検査方法であるので、より低侵襲な検査法が求められています。その一つとして、遺伝子による診断の実現に向けて研究を進めています。現在は、患者さんの遺伝子情報から原因となる遺伝子変異を検索してそれを診断の補助として使用する一方、原因となる遺伝子変異が見つからなかった症例に関してはRYR1以外の新たな原因遺伝子の探索を行っています。学内外の研究室と情報を共有して研究を進めています。

骨格筋細胞内のCa調節の模式図

血管弾性に関する研究

質の高い麻酔には、バランスの取れた鎮静と鎮痛が必要です。血管弾性に関するグループは広島大学工学部 生体システム論研究室と共同して、交感神経活動を末梢血管の剛性変化(血管剛性値)として測定し、痛みを客観的に評価する手法を開発しています。全身麻酔中の患者さんは意識がないため、痛みを訴えることができません。血管剛性値は全身麻酔中でも痛みを鋭敏に反映します。また、現在の全身麻酔中の鎮痛薬の主流であるオピオイドは、効きやすさや副作用の発現しやすさが患者さんごとに大きな差があることが知られています。血管剛性値の変化を基にオピオイドの効きやすさを滴定し、個々の患者さんに最適なオピオイドの量を投与することでオピオイドの副作用を軽減する試みを行っています。我々はこれらの研究を通じて全身麻酔中の患者さんの秘められた“痛み”を明らかにし、より質の高い麻酔を提供することを目指しています。

経頭蓋静磁場刺激(tSMS)に関する研究

電流や磁場を利用して、頭蓋骨の外から脳を刺激する方法を、非侵襲的脳刺激(NIBS)といいます。NIBSは主に脳神経の検査や病気の治療に用いられています。例えばNIBSの一つである反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、電磁石を用いて短い磁気パルスを発生させ脳を刺激する方法で、脳梗塞の後遺症や神経障害性疼痛(NP)、治療抵抗性のうつ病に対する効果が認められています。特に、薬物療法を行っても症状が慢性化しやすいNPの患者さんに対しては、有用な補助療法となる可能性があります。しかしrTMSは機器が大がかりで高価であり、刺激には専門知識が必要となるほか、電磁石を用いることによる副作用も懸念されています。

同じくNIBSの一つである経頭蓋静磁場刺激(tSMS)は、永久磁石が発する静磁場を用いて脳を刺激する方法で、rTMSと比較して安価で簡便であり、安全性の高い手法です。これまでの研究でtSMSは脳の興奮性を低下させることが分かっており、rTMSと同様にNPを緩和する可能性が示されています。我々は、より簡便で安全なNPの治療法を開発するために、tSMSを用いてNPを緩和する研究を、広島大学の感覚運動神経科学教室と共同で行っています。

集学的な痛み治療に関する研究

ペインクリニック外来では精神科、リハビリテーション科と共同で集学的な痛み治療についての研究を行っています。慢性的な痛みを抱える患者さんでは身体的な不全以外にも心理的な要因や社会的な要因が痛みに大きく関与します。このような痛みに対しては、鎮痛薬による薬物治療や神経ブロックによる痛みの軽減だけでは生活の質が十分に改善しません。このような患者さんに対しては薬物治療や神経ブロックに加えて認知行動療法などの心理的アプローチやペインリハビリテーションなどの理学療法を組み合わせることで得られる治療効果を研究しています。